イベント・セミナー情報
「産地連携フォーラム座談会」 レポート
「産地連携を取り巻く関係者全員がWin-Win」となる連携のあり方」

「産地連携フォーラム」では、連携の先行事例・好事例の紹介、オンラインセミナーでの情報発信・共有などの取り組みを進めています。2026年2月16日(月)には「産地連携フォーラム座談会」を東京都内で開催しました。座談会の目的は、多様な業種の関係者を巻き込んだ産地連携のあり方について議論し、今後の取り組みに活かすことにあります。食品メーカー、生産者、農産物の一次加工事業者、種苗会社、農業機械メーカーの担当者に参加いただき、「関係者全員がWin-Winとなる連携」の構築に必要となる視点やポイントを話し合いました。
- キユーピー㈱ 生産本部原資材調達部 白石 明美 氏
- くにみ農産加工㈲ 代表取締役 吉丸 栄市 氏
- JAおおいた東部事業部野菜加工部会 部会長 石川 泰也 氏
- ㈱ウエルシード 取締役 塙 久美子 氏
- ヤンマーアグリ㈱ 開発統括部 先行開発部 知能化グループ 主席 三谷 英樹 氏
事業者と生産者が連携し 新たな原料と製品を開発
産地支援と産地開発の取組
座談会に先立ち、第5回産地連携オンラインセミナー「気候に合わせた産地開発」を開催しました。食品メーカーのキユーピー㈱、農産物の一次加工事業者のくにみ農産加工㈲、生産者代表としてJAおおいた東部事業部、3社・団体の担当者が取り組みを発表されました。
連携が始まったのは1999年。キユーピーが「高品質な国産のバジルを栽培したい」と、くにみ農産加工に相談したことがきっかけとなりました。両社はすでに他の原料加工で連携をしてきた実績がありました。くにみ農産加工が拠点を置く大分県国見町の気候や風土がバジル栽培に適合するのではないか。このような発想から新たな原料開発を開始したのです。

病害発生のアクシデントを受け、すべての関係者がWin-Winとなる仕組みの構築を目指す
取り組みは順調に進みましたが、2015年にべと病が発生し、産地は危機的な状況に置かれました。この危機を受け、関係者はリスクを共有し、産地を守る連携を進めていきます。具体的には以下の仕組みやルールを築きました。
①海外から病気に強い種子を調達し独自の殺菌コート技術を開発
②香りがよく柔らかい葉のみを製品とするため、新芽から2節目までだけを手作業で摘みとる
③栽培技術をデータ化し共有する
④農作業の内容や時間、施肥した肥料名や量などをリアルタイムに記録(クラウドシステムを活用した「畑のみえる化」)、⑤出荷前のスクリーニングシステムの運用。
生産者だけがリスクを負うのではなく、三者が連携して原料調達、バジルの栽培、加工、産地形成を推進しています。
※セミナーの様子は第5回オンラインセミナーレポート に掲載
関係者全員がWin-Winとなる連携のあり方
セミナーでの発表を受け、座談会では、多様な事業者を巻き込んだ連携、関係者がWin-Winとなる連携のあり方をテーマに話し合いました。
産地連携による三者のメリットとして、高品質なバジルの栽培、バジルペーストの加工、付加価値の高いバジルソースなどの製品を開発・販売できたことが挙げられます。
べと病発生の危機的な状況を受け、三者は連携のあり方を変えてきたといいます。くにみ農産加工が開発した種子を低価格で生産者に提供。この目的は参入障壁を下げること、リスクを企業側が引き受けることにあるといいます。栽培技術や管理方法もDX化を図ることで、生産者の省力化を図るとともに、企業側がリスクを共有する仕組みも構築しています。管理を徹底することで、秀品・良品・普通品の三段階の生産品の品質評価があるなかで、秀品率が99%を達成しているということです。
不測の事態が発生した際の対応については、「シーズンを通して安定した収穫量が期待できる品種を選定し、常にデータを検証することでリスクを回避できている」と吉丸氏が解説されました。
この他、座談会では、契約栽培・委託栽培を行う際の条件設定や考慮すべき点、関係者全員がWin-Winとなる連携を構築するために必要な視点を話し合いました。一例を挙げると、生産者の参画の意思や希望する生産量の確認、次年度以降の作付け計画などの確認、資材高騰などに対応した買取価格の設定、複数年契約の選択肢などの可能性について意見を交わしました。

座談会の様子

(左から)JAおおいた 石川氏、
くにみ農産加工 吉丸氏、キユーピー 白石氏
種苗会社や農業機械メーカーとの連携
種苗会社との連携について、㈱ウエルシードの塙氏は、食品メーカーが抱える課題の解決に向けて新たな種苗の活用を提案してきた事例を紹介。「産地連携の関係者が抱える課題の解決に向けて、国内外の様々な種苗メーカーの製品を取り扱う、私たち種苗小売会社だからこそ果たせる役割がある」と連携の重要性を訴えました。また、助成制度があれば、新たな種苗での作付けに挑戦する生産者が増えるのではないかと塙氏は分析されています。
農業機械メーカーとの連携について、ヤンマーアグリ㈱の三谷氏は、農地の規模の拡大化が進むなかで、生産者の負担軽減に加え、気象や栽培に関するデータ活用に取り組んでいることを紹介。「生産者に加え、食のバリューチェーンに携わる多くの事業者に活用いただける環境を農業機械メーカーとして作り上げていきたい」と今後の技術開発の方向性を解説されました。
産地連携フォーラムでは、今後も関係者の皆様との情報共有を進め、関係者がWin-Winとなる連携構築の推進を目指します。

ウエルシード 塙氏

ヤンマーアグリ 三谷氏