お問い合わせ

モデル事例紹介

生産・流通の双方から産地の体制を築く 黒大豆×小田垣商店 持続可能な「丹波黒」産地の形成

公開日: 2026年3月12日
「丹波黒」の栽培面積国内1位の兵庫県で、豆類卸小売業の㈱小田垣商店(丹波篠山市)が産地の課題の解決に向けた取り組みを開始した。課題となっているのは、気候変動や人手不足などへの対応だ。こうした環境変化の中でも「丹波黒」の品質と生産の維持・向上を目指し、県内の生産者と生産・供給体制の構築を目指す産地連携の取組を2025年から強化して進めている。

産地化までの流れ

産地の先人が育んだ「丹波黒」

丹波黒は兵庫県丹波地方を発祥とする在来品種の黒豆で多様な系統が存在しており、先人たちが優良な種を選んで育種し品質の向上を図ってきた歴史がある。「丹波黒」は極晩生で大粒の黒大豆。開花から成熟するまでの日数が100日と、一般的な黒大豆よりも30日ほど長く、養分を蓄積しながら成熟し粒が大きく成長する。※1

小田垣商店は1734年に創業し1868年から種苗店を開業した老舗の卸小売業者。早期から「丹波黒」の生産振興に関係者と取り組んでいる。丹波篠山市・兵庫県・近隣府県の生産者、行政、JA、食品メーカーと連携し、①生産者へ種子の提供、②栽培方法の指導、③生産物の全量買い取り、④消費者へのPRを通じて「丹波黒」の生産拡大とブランド化を推進してきた。

※1:丹波黒は、特定の品種ではなく在来品種の総称であるため、明確な定義はなく多様な系統が存在している。生産関係団体、流通・加工業者、行政などが参画する「兵庫県丹波黒振興協議会」は、丹波黒を優良系統(川北、波部黒、兵系黒3号、兵系黒6号)に統一するとともに、優良種子の生産や栽培技術の向上に努め、優良な丹波黒を供給できるよう取り組んでいる。

高齢化・気候変動による産地の課題

その一方で、高級食材の「丹波黒」は美しい外観を保つために栽培の大部分が手作業で行われ、他の作物と比較すると非常に手間がかかる。産地では生産者の高齢化等により栽培の継続や生産規模の維持が課題となっている。
気候変動による影響も大きな課題だ。高温、少雨などにより、兵庫県の産地で栽培する「丹波黒」の一部で収穫量の不安定化や小粒化、面積当たりの収量の低下がみられた。

地域の特産品である「丹波黒」の生産量維持・拡大と品質水準の維持、この両立に対する懸念が高まっている。産地の課題を察知した小田垣商店は生産者との産地連携に動く。
その目的は、①丹波黒の収穫量の安定的・持続的な増加と品質の維持、②増加した収穫物を確実に出荷できる安定供給体制の構築――。具体的な手法として以下の取り組みを一体的に進めようと生産者に呼びかけた。

1)気候変動下でも安定した生育が期待される新系統の種苗の提供、実証栽培
2)効率化を図るための農業機械の貸与と栽培指導
3)選別・充填(じゅうてん)工程の処理能力向上、自動化による出荷体制の強化

新系統導入と省力化の取組

小田垣商店は丹波篠山市や兵庫県が「丹波黒」の大産地となる前から生産者に優良な種苗を提供するなど支援を行ってきた。気候変動が課題となる中、兵庫県丹波黒振興協議会は温暖化の環境下でも安定した生育が期待できる系統として「兵系黒6号」を優良系統に新たに位置付けた。

産地連携では、小田垣商店が生産者に呼びかけ、「兵系黒6号」の実証栽培の趣旨に賛同した丹波篠山市内の個人農家が参画。兵庫県、丹波篠山市、地元農協の協力を得ながら、連携先の生産者に種苗を提供し、実証栽培を通じて適性評価を進めている。

効率化支援は、地域の生産者の成功事例がきっかけとなり開始した取り組みだ。「丹波黒」をコンバイン機で収穫すると、豆に傷や割れが発生することがあるが、運用などを工夫することで、品質を維持したうえで機械化による省力化・効率化を目指している。

2025年から実施した産地連携の取組では、兵庫県内の生産者と栽培契約し、新たに大型農業機械を貸与し栽培指導を行った。供給の安定化に向けて、小田垣商店の選別・充填工程の処理能力向上・自動化による出荷体制も強化した。

 

連携によって生まれた生産者・事業者のメリット

「兵系黒6号」の実証栽培では、従来の系統より良好な収量性が期待できる可能性が示された。関係者は今後も産地連携の取組を継続し、効果の検証を続けていく考えだ。

効率化支援では、大型農業機械の導入により手作業で数日要していた収穫作業が数時間程度で完了するなど、大幅な効率化を期待できる結果となった。今後もこの知見を高め、持続可能な丹波黒栽培を目指していく。

産地連携の取組によって生産者が得られたメリットは、「兵系黒6号」導入や大型農業機械の活用により、効率化・収量安定の可能性が確認できたことがあげられる。「生産地の将来に向けた栽培継続への期待感にもつながっている」と関係者は感じている。
事業者のメリットは、気候変動や人手不足が進む中でも、産地の生産量を維持・拡大できる体制を構築し、安定した原料確保につなげられたことにある。「生産から出荷までを一体的に支える体制づくりが着実に前進した」と小田垣商店生産企画部の担当者は手応えを感じている。

知見を広げ、産地全体の生産力向上を目指す

生産力の向上や安定供給体制の整備が進むことで、「丹波黒」のブランド価値を支える基盤強化につながることが期待されている。今回の取組成果を産地全体に広げ、気候変動や担い手不足といった課題に対応することで、産地の持続性向上や将来的な消費拡大につながることが期待される。

小田垣商店では今後も産地連携の取組を継続し、優良種子の普及や栽培支援などに取り組む考えだ。気候変動や人手不足といった環境変化の中でも、「丹波黒」の生産と品質を維持していくため、生産現場と流通の双方から支える体制づくりが進められている。

㈱小田垣商店の声

生産者の方々とは日頃から栽培指導や情報共有を通じて信頼関係を築いてきたこともあり、迅速に連携できました。地域の生産者の皆さんも産地の課題に気づいていました。将来の産地維持につながる取り組みを協力し合い進めることができました。

産地連携を通じて、生産現場の課題と改めて向き合いながら、「丹波黒」の生産を将来につなぐための具体的な一歩を踏み出せたと感じています。気候変動や人手不足といった環境の変化の中でも、生産者の皆さんが安心して栽培を続けられる環境を整える。それが私たちの役割だと考えています。産地と連携した技術導入や体制整備を重ねることで、持続可能な「丹波黒」産地の形成に貢献していきたいと考えています。

これからも生産者とともに歩み、生産から流通までを支える立場として、「丹波黒」の食文化や価値を次世代へつないでいけるよう取り組んでいきます。

株式会社小田垣商店
事業内容

享保十九年(1734年)創業の豆類専門店です。丹波発祥の高級品種「丹波黒大豆」や「丹波大納言小豆」を国内最大規模で取り扱い、全国の乾物店や食品メーカー、百貨店、量販店、一般のお客様へお届けしています。また国登録有形文化財を活用したカフェ・宿泊施設の運営を通じ地域活性化にも取り組んでいます。

小田垣商店ホームページ
URL:https://www.odagaki.co.jp/

生産者の声

個人生産者様
地域の生産者の紹介で、小田垣商店と契約栽培を結ぶことになりました。栽培面積約30㌃です。収穫した作物を規格外品も含めて全量引き取っていただけるため、安心して栽培に取り組めるようになりました。また、栽培に関するさまざまな情報提供もあり大変助かっています。
当初、取り組みの話を聞いた時は、兵系黒6号を栽培することで収量や品質がどのように変わるのか期待がある一方で、不安もありました。

実際に栽培してみて、従来の系統と比べて枯れ上がりが早く、収穫時期も早めに迎えることができました。収穫量が多く、面積当たりの収量も良かったため、魅力のある品種だと感じました。流通量が限られている種子を優先的に提供していただけたことがありがたかったです。

小田垣商店が全量買い取ってくださるので安心して出荷することができます。今後も連携を深めながらさらに面積を拡大し、収量の向上を目指していきたいと考えています。