モデル事例紹介
種苗提供・設備増強が支える、生産拡大と安定調達 ワカメ×理研食品 連携で築く持続的なワカメ産地と地域漁業の発展
産地化までの流れ
産地支援と産地開発の取組
理研食品㈱は、ワカメをはじめとする海藻関連製品の研究・開発・製造、調味料、エキス関連製品の製造、海藻類の陸上養殖などを主力事業とする。生ワカメを塩で保存した塩蔵わかめ製品を先駆的に販売し、1976年にフレーク状の乾燥わかめ製品の販売を開始した。この他、冷凍わかめや調味わかめなど小売用・業務用の製品を開発・販売する。
設立当初の1960年代から、理研食品は三陸や鳴門などの産地で原料を調達してきた。近年は、ボイル釜を貸与し加工技術指導を行うなど、産地との協業を推進し、産地開発も積極的に進めている。
気候変動による生産量の減少や生産者の高齢化など、海藻産業が抱える課題の解決に向けて、2017年に最先端の研究拠点「ゆりあげファクトリー」を宮城県名取市に設立。ワカメ養殖の分野では、優良種苗を生産し、産地との連携を通じて生産の安定化と品質向上に取り組んできた。
出荷先が見つからない産地の課題と、連携への期待
上磯郡漁業協同組合は、管内の漁場管理や海産物の販売などの役割を担う。管内の主な漁場や養殖場は津軽海峡などであり、組合員は、定置網漁業、刺網漁業、イカ釣り漁業、養殖漁業、磯漁業などを営んできた。主要魚種はサケ、ホタテ、コンブなど。この他に、海藻類ではフノリ、ワカメ、ヒジキを生産する。
産地連携のきっかけとなったのは、理研食品からの「呼びかけ」だ。2006年に同社と上磯郡漁協は、協業してフノリの調査を開始する。この動きの中で、理研食品の原料調達の担当者に気づきがあったという。管内のワカメ養殖を実際に見て「北海道産ワカメ」に「可能性」を感じた。北海道産の農水産物は知名度が高いものの、養殖ワカメについては、三陸産(宮城県・岩手県)と鳴門・瀬戸内産(徳島県、兵庫県)が国内生産量の9割以上を占める。そうした中で、あえて「北海道産ワカメ」をブランド化することで、わかめ製品のさらなる充実化を図りたいと考えた。
当時、上磯郡漁協はまなす支所管内でワカメの養殖を営む組合員は、それほど多くなく、ワカメ原藻の年間生産量は10㌧ほどであった。ワカメ養殖は主力魚種の漁期の合間となる2、3月にできるため、組合員の関心は高かったが、市場での需要が伸びず、生産を拡大しても出荷先がない状況だったという。このような中で養殖をやめる組合員が増えていた。
理研食品からの連携の提案を受け、組合員からは「これでワカメの生産を続けられる」といった声があがった。また、同社が調達拡大を目指していることを聞き、「上磯郡産のワカメの生産を拡大できる」と連携に対する期待が高まっていった。こうして両者の目標の達成を目指す産地連携が2009年に開始した。
種苗提供と設備増強による生産拡大の仕組みづくり
連携の仕組み・両者の役割は、取り組みを進めるなかで変化している。
当初は、上磯郡漁協はまなす支所の組合員数人が連携に参画。組合員が採苗、海上施設での養殖、収穫を担う。理研食品は、上磯郡漁協に加工用のボイル釜を貸与し、加工技術指導する。さらに、同社は、はまなす支所で加工したワカメを全量買い取り、北海道産の乾燥わかめ製品を製造し、販売する。このような体制で連携を進めてきた。
連携に参画する組合員が増え生産量が拡大していく中、理研食品は、大型のボイル釜を貸与することで生産力の増強を図ってきた。2014年には、釜に加え加工設備一式を貸与し、ワカメの生産量の拡大、加工の省力化・効率化を図る仕組みづくりにも取り組んだ。
ワカメ養殖の種苗は、当初は組合員が自ら採苗していたが、生産の安定、生育したワカメの品質の面から課題もあったという。理研食品は、上磯郡漁協からの相談を受け、自社で生産する種苗を産地連携で活用することを決め、検証を経て2021年から導入。種苗生産を理研食品が担うことで、種苗確保から本養殖まで育成する目途が立ち、品質の面でも色や歯ごたえの良いワカメを生産できるようになった。
現在、産地連携には、はまなす支所と上磯支所の15世帯・40人ほどの組合員が携わり、理研食品に納入するワカメ原藻の生産量は300㌧まで拡大した。

ワカメ加工用のボイル釜
生産量拡大と安定調達の実現により、生産者・事業者双方がメリットを享受
産地連携の成果として、上磯郡漁協は、ワカメの生産量を拡大できたことを挙げる。年間300㌧まで増産できた要因については、理研食品と上磯郡漁協の分析として、以前は需要が限られていたが、連携により新たな需要を創出できたものとみている。理研食品が増産を目指すことにより、産地でも生産を拡大することができたわけである。
「種苗提供や加工設備の増強も生産拡大につながった」と上磯郡漁業協同組合理事を務める高森茂貴さんは話す。ワカメは短期間で収穫するためボイルの工程は混みあってしまう。当初は収穫時期を分散して円滑に加工する調整が必要だった。設備の大型化・一元化により、生産者が希望する生産量や収穫のタイミングに柔軟に対応することが可能となった。
理研食品は、良質の原料を安定して確保できること、産地を支える役割を果たせたことを、連携の成果として挙げる。今後はコンブなど他の海藻でも連携していきたい考えだ。
連携を推進できたポイントについて、理研食品 原料部 原料グループ グループリーダーを務める佐藤吉勝さんは「高森理事をはじめとした上磯郡漁協の方々の積極的協力が大きい」と話す。産地と情報を共有し、生産者からのフィードバックを受け、両者でよりよい仕組みづくりに取り組んだことが生産拡大につながったということだ。
新たな課題に向き合い、地域漁業の持続と未来を拓く
温暖化の影響により、国内のワカメ産地では、養殖開始の遅れによる養殖期間の短縮などの課題が顕在化している。上磯郡漁協の漁場ではワカメの本養殖に入る10月下旬には海水温が適温となり、他の産地ほど大きな問題にはなっていないという。しかし、収穫時期には温暖化の影響を受けるため、早生系統の種苗による生育検証を行い、対策に取り組んでいる。
漁業の人材確保、後継者養成は、上磯郡漁協でも課題となっている。近年、漁船漁業の環境変化、資源の減少、燃料・資材・人件費の高騰などの課題があり、水産業の再生に向けた方策を関係者が協議している。連携に参画している組合員の中には漁船漁業を継続することが難しく、廃業を考えていた人もいたという。ワカメ養殖はそれほど人手や経費がかからないこともあり、養殖漁業に移行し、連携に参画し、漁業を継続することができた。
現在、産地では、ワカメ養殖に対する関心や期待が高まっている。市場出荷や上磯郡漁協の直販を含めると、管内全体のワカメ原藻の生産量は年間500㌧まで成長した。上磯郡漁協の「海峡わかめ」は地域の特産品として高い人気を誇る。
理研食品と上磯郡漁協の産地連携をモデルに、地域漁業の維持、後継者の養成、地域の発展につなげたいと関係者の期待が高まっている。
理研食品㈱の声
理研食品では調達部門の専任のリーダーとメンバーが連携先の国内外のワカメ産地に出向き、原料の品質確認、加工指導に加え、採取時期の海の状況などを確認しています。安全でおいしい商品をお届けするため、産地の環境調査と品質維持に努めています。
上磯郡漁協との連携では、生産者と漁協からのフィードバックを受け、種苗の提供、加工設備の増強を図るなど、連携して仕組みづくりに取り組みました。
私たちは「ときめき海藻屋」のブランドを立ち上げ、海藻の周知活動、食育活動などを展開しています。この中で、「産地をときめかせたい」思いから産地協業を推進しています。漁業の人材不足の課題に対し、種苗の提供、産地連携を推進することで、「私たちの地域でもやってみよう」と機運を高めていきたいと考えています。これまで産地と連携を通して、機械化・省力化などの仕組みを築いてきました。この知見を伝え、共有していくことも私たちの役割だと考えています。
原料部 原料グループ グループリーダー
佐藤 吉勝(さとう よしかつ)
宮城県出身1986年入社、製造課に配属、製造課にて16年勤務し、工場での製品製造に加え、海外(中国)の工場立上げも経験。その後、子会社の工場長、物流グループリーダー、韓国事業部等を経て、2019年より現職。
1964年 理研ビタミン株式会社の子会社として誕生。「ふえるわかめちゃん®」を中心とした、海藻関連製品の製造・研究・開発。海藻養殖の生産安定化に向けた種苗の生産・研究と、調味料・エキス関連の製造を行っている。 健康づくりに欠かせない海藻をもっと食事に取り入れていただくために、「ときめき海藻屋」ブランドを創設し、新たな魅力の発信を行っている。
理研食品ホームページ
URL:https://www.rikenfood.co.jp/
ときめき海藻屋
URL:https://www.tokimeki-kaisouya.jp/
生産者の声:上磯郡漁業協同組合
産地連携に取り組む前は、市場に出荷できるワカメの量が限られ、思うように生産量を増やすことができませんでした。理研食品から連携の提案があり、調達量が大規模であることを聞き、組合員は喜びました。「前向きに取り組もう」と意気込む人が多かったですね。
自分たちでワカメの種苗を採苗するのは苦労もありました。そこで、私たちから理研食品に相談し、種苗を販売してもらえるようになったのです。理研食品の種苗で生産したワカメはツヤがあり、肉厚で歯ごたえがあります。加工は理研食品の職員が指導してくれるので安定した品質となり、安心できます。
ワカメの生産量が増えているのは組合員が張り切っているからでしょう。管内の知内町、木古内町での展開も検討しています。
理事 高森 茂貴(たかもり しげたか)
(写真は はまなす支所)
北海道北斗市出身。営業職を経て1983年より家業を継ぎ、昆布、わかめ養殖の他、網漁等の漁業に従事。1990年より同漁協の理事となり、地域漁業の発展に尽力している。
北海道渡島半島に位置する知内町・木古内町・北斗市から成る上磯郡において、漁場管理や海産物の販売を実施。主な海産物はカキ、ワカメ、ほっき、ふのり、マコガレイ、ウニ、ホタテ、コンブ、サケ、イカ、アワビ、ひじき、カレイなど、津軽海峡で育った美味しい海の幸が名産品となっている。
上磯郡漁業協同組合ホームページ
URL:https://jf-kamiisogun.com/