モデル事例紹介
碾茶の新たな産地を築く 茶×ハラダ製茶 碾茶の新規生産・調達量の拡大を目指す産地連携
産地化までの流れ
急拡大する抹茶の需要、追い付かない原料調達
ハラダ製茶は1917年に創業した。茶農家から出発し製茶、茶の販売と事業を広げてきた。現在は、210㌶の自社・契約農園で栽培と茶製品の開発・製造・販売などを展開している。
製品はリーフ、ティーバッグ、ペットボトル飲料の原料他約2000品目。緑茶のリーフとティーバッグは国内トップクラスのシェアを誇る。業務用では国内外企業の商品開発・製造を手がけている。
原料栽培の主要拠点である自社農園(80㌶)では、グループ会社の㈱ハラダ製茶農園が生産を担い、契約農園の生産者(以下、会員)とはビジョンを共有し高品質の茶を生産してきた。海外事業にも取り組み、東アジア、東南アジア、北米、中東に販路を広げている。
碾茶の産地連携の背景には国内外の抹茶需要の高まりがある。市場や顧客のニーズに応えるため、ハラダ製茶は自社農園・契約農園で碾茶向けの茶を栽培、2014年から自社工場に碾茶の製造設備(以下、碾茶ライン)を導入し生産してきた。現在、2工場で5ラインを稼働する(5ラインの碾茶の総生産量は約400㌧)。
碾茶の生産体制を強化してきたハラダ製茶だったが、海外での抹茶ブームで2022年ごろから需要が急速に増加、さらに契約生産者が高齢化で離農するなど、需要に供給が追い付かない状況になっていった。

碾茶製造ライン
碾茶栽培の新たな産地を築く
抹茶の増産に向け、ハラダ製茶は碾茶の調達先開拓に動く。碾茶は茶樹を遮光資材で一定期間被覆するため、その分、資材、労働力、栽培技術が必要となる。そこで同じように被覆し遮光する、かぶせ茶の農園・産地を中心に連携先を探していく。
一方、にしたなは20㌶の自社茶園で茶の栽培および荒茶を生産している従業員8人の事業者だ。契約農園20戸(60㌶)の茶園で生産した茶葉を買い取り、深蒸し茶などを製造する。これまで碾茶も栽培しており、その可能性を感じていたことから、碾茶の生産に取り組もうと検討していた。そうした中、定期的に行う情報交換の場でハラダ製茶とにしたなは連携の意思を固め2025年から取り組みを開始した。
連携での事業者と産地の役割
にしたなの茶園においては、碾茶の栽培は2026年の一番茶から栽培する。品種は「やぶきた」が中心で、「つゆひかり」など他品種でも生産する予定だ。
連携での役割分担は、ハラダ製茶農園の社員が、にしたなの茶園に出向き、技術指導を行う。これまで同社が培ってきた技術を共有し、茶樹を被覆するタイミング、遮光期間、茶摘みの時期をすり合わせていく。この工程は完成した抹茶の色合い、成分など品質に関わるため特に重要になるという。
ハラダ製茶農園は、被覆資材が不足した場合は貸し出し、農作業が忙しい時期は必要に応じて社員が応援に入る。防除ではJA遠州中央が協力する。米国に抹茶を輸出するには、米国の基準に合わせた防除が必要になるため、JAが使用する農薬の選定、防除の時期や使用法などを生産者に伝えている。
碾茶製造ラインについては新品の設備を、にしたなの工場に貸し出して導入済みだ。今後は、収穫した生葉を碾茶に加工する工程(蒸し・冷却・乾燥)までをにしたなが担う。碾茶の生産は1年目が年間60㌧、2年目は80㌧を目指す。全量ハラダ製茶が買い取り抹茶を製造する。
持続可能な生産体制が生産者と事業者双方のメリットに
碾茶は煎茶より高く取引されるため、にしたなとその会員である契約栽培農家は収入増につながる。ハラダ製茶は求める品質の碾茶を調達できる。さらに顧客が求める量を安定的に供給できるメリットがある。
この産地連携を構築できたポイントは、「熱意のある産地とつながりが築けたことにある」と、ハラダ製茶原料生産部部長の有海雅之さんは話す。農園や産地全体で碾茶を生産するには生産者の合意が欠かせないが、切り替えには設備投資などのリスクもある。今回、にしたなが会員や地域の生産者に呼びかけることで産地としての取り組みが実現した。今後、碾茶栽培の普及、生産者の収益向上、地域の茶産業の発展につながると期待が高まっている。
茶産業の維持・発展を目指す
ハラダ製茶は今後、碾茶調達のさらなる拡大へ産地連携を他の産地にも広げていく考えだ。「持続的に生産できる体制を築けば、互いにWIN-WINとなる」と有海さんは話す。
さらに、離農などで荒廃した茶園を再生する取り組みも進めている。ハラダ製茶農園の社員が、そうした茶園で茶やその他農産物の生産を手掛けている。茶産業の持続的発展を目指し、事業者と産地の連携が進められている。
ハラダ製茶㈱の声
茶産業は生産者の高齢化による離農、後継者確保が課題となっています。営農を継続へ生産者が抱えるリスクへの対策を立てサポートする体制を築くことが使命だと考えています。
ハラダ製茶は茶農家から出発し、栽培からこだわり持って製品を開発し提供しています。市場、消費者が求める商品を茶園・農園から一貫体制で作れることが強みです。これからも生産者の方々と連携し、高品質の茶や商品の開発・販売を進めていきたいと考えています。
原料生産部
有海雅之(ありかい まさゆき)
18歳でお茶の勉強を始め、20歳から22歳まで鹿児島の茶商でお茶の荷受けから入札補助まで経験し、お茶の良し悪しを勉強。
23歳の年に心機一転、ハラダ製茶株式会社へ入社し、東京で量販事業の営業職を経験、現在は農園部門、精製加工部門に従事している。
ハラダ製茶はグループの中の製造部門です。
主にお茶の仕入、精製加工、袋詰めを行なっております。2008年に自社農園を立上げ、現在てん茶の加工も行っており、生産されたてん茶を元に抹茶加工にも力を入れております。
また、全国の茶産地から仕入を行っており、リーフからティーバッグまで幅広い商品をお客様へお届けしております。
ハラダ製茶ホームページ
URL:https://harada-tea.co.jp/
生産者の声
現在、海外でも高い需要がある碾茶製造に対して、生産・製造能力等、将来性がある規模に挑戦する機会をいただきました。碾茶ラインは希望の設備をスピーディに整えていただけました。
これから栽培を開始しますが、喫緊の課題となっている担い手・労働力不足に対して、ハラダ製茶農園の社員の方が応援に来られて、被覆の設置や除去などに手厚いサポートがあることが助かります。また、茶樹を被覆するタイミング、遮光期間、茶摘みの時期など細やかな栽培指導を受けられることもありがたいです。
産地連携により袋井が碾茶の産地になります。地域には碾茶栽培に関心を持っている生産者もいると思います。地域全体として持続可能な茶生産のきっかけとなったと感じています。
代表取締役 森下隼(もりした じゅん)
静岡県袋井市に県下最大級の荒茶製造工場を有し、 自社茶園20ha、契約茶園40haを保有し、 合計60haの規模で日本茶の栽培・荒茶生産・加工・卸売を一貫して行っています。 従業員は8名(うち正社員5名)で、 農林水産大臣賞を2度受賞するなど熟練の技術と、 新しい発想で地域を盛り上げる拠点になるよう活動をしています。
